神戸市灘区のT様から次のようなご相談を頂きました。

「家を売却することになったのだが、名義を調べてみると祖母の名義のままで、このままでは売却が出来ないと不動産屋さんに言われました。早急に相続の手続きをお願いしたい。」

お話を聞きながら、相続関係を紐解いていくと、現在対象になる相続人は10名(2世代前の名義からの相続だと対象者が広がることはよくあります)、

しかもそのうちの1人は、30年以上前に失踪をしていて、その後家族にも一切の連絡がないとのことです。

依頼を受けて、まず司法書士事務所で行う手続きは相続関係を戸籍謄本などを取得していきながら確定することです。

そこで、その失踪している方についても、戸籍は抹消されず残っていました。

そうなると相続の手続きを行うためには、遺言書がない場合、相続人全員での協議が必要になりますので戸籍が残っている以上、その方も含める必要が出てきます。

ただ、お話を聞くと、若くして失踪してしまい、警察などにも捜索願は出したが、

全くの手がかりもなく音沙汰もないまま今まで経過しているとのことで手がかりのつけようがないとのことでした。

このような場合には、不動産を売却することができないのでしょうか?

法律上「失踪宣告」という制度があります。
(参照HP 裁判所:https://www.courts.go.jp/nagoya-f/vc-files/nagoya-f/file/syouteim-s16qa.H250514.pdf)

簡単にいうと、生死不明の状態が一定の要件を満たすと、関係者からの申し立てによって死亡したものとみなして法律関係を確定させる制度です。

今回は、普通失踪として7年以上の期間生死が明らかではない状態が続いているため、他の相続人が裁判所に申し立てをして、

その後認定されることで手続きを終えることができました。

ただし、この失踪宣告というのも、簡単に認められるものではなく、裁判所に申し立てをして事情を疎明し裁判所調査官による調査の上で、

官報や裁判所の掲示板で3か月以上の催告期間があり、その後失踪宣告の審判がなされて、2週間後の確定後に役所に届け出をして除籍をしてもらいますので、

大体、相談の時点から手続きの確定までに半年ほどかかります。

これによって、今回の相続の対象者からは外れますので、他の相続人によって協議を終えることができましたが、

時間的にも費用的にも大変な経験になってしまったようでした。

このような手続きまでならないようにするには、

相続人の対象者に「行方不明のもの」がいるようなケースでは、予め、「遺言書」「家族信託」などを利用し、

財産の承継先を決めておくことが重要だと言えます。

あるいは、祖母の代から相続した財産を長期間放置したために、関係者が増えてこのような問題が起こったともいえますので、

相続後は速やかに相続手続きをさせて、確定させる。ということも重要ですね。

このように、困ってからの対策には時間や費用がかかってしまうので、困らないための早めの対策を心がけましょう。

相続、遺言、家族信託、失踪宣告などのご相談には、是非、経験豊富な弊所にご相談ください。

お問い合わせはこちら

司法書士事務所Karma Legal Office